漫画『予告犯』のストーリー完全ガイド!登場人物と見どころ事件も網羅して解説

動画サイトでは次々に表示されるねこの動画に時間を奪われて仕事に追われがちなマンガタリライター、衛澤(えざわ)です御機嫌よう。

2015年に漫画『予告犯』を原作とした同名の映画が公開されました。ご覧になりましたか?
筆者は残念ながら、劇場に足を運ぶ機会を逸してしまい、先に原作に触れました。

筆者のように映画を見そびれて原作を読もうと考えている人、映画を観たけど原作のラストも知りたい人、原作を読んだけどもう一度ストーリーをなぞりたい人……さまざまおられると思いますが、その何れの人にもご満足頂けるよう、漫画『予告犯』の見どころとストーリーを解説します。

何れの人もおしまいまでお付き合いください!

目次

1.『予告犯』はどんな漫画?

早速、漫画『予告犯』について解説して参ります。まずは作品の基本情報から。

『予告犯』
作  者 筒井哲也
連  載  誌 ジャンプ改
連載期間 2011年7月~2013年8月
出  版  社 集英社
映  画 2015年6月公開
スピンオフ 「予告犯 -THE COPY CAT-」(小幡文生)
「予告犯-THE CHASER-」(久麻當郎 / 小説)

約2年に渡り「ジャンプ改」に連載された『予告犯』は、連載終了の2年後に映画化されました。かなりの話題作となったので、記憶している人も多いのでしょう。

作者の筒井哲也はシャープな筆致で、ヴィジュアル面でもストーリー面でリアリティ豊かな、社会派の漫画を描く人です。

『予告犯』のほかに、歪んだ正義と病疫の意図的な蔓延の恐怖を描いた『マンホール』、表現規制に対抗する漫画家を通して、規制と自由の間で「表現」は何処まで許され得るのかを問うた『有害都市』など、読み応え充分の作品があります。


筒井哲也の作品(ライター撮影)

『予告犯』が連載されていた「ジャンプ改」のキャッチコピーは「大切ことは、いつもマンガが教えてくれる」。このコピーの通り、『予告犯』という漫画も大切なことを教えてくれています。みなさんもぜひこれをそれぞれに読み取ってください。

2.「予告犯」のあらすじ

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第1巻File002より引用

インターネットが普及したことで「サイバー犯罪」が急増する日本。警視庁にもサイバー犯罪対策課が設置され、若き警部補・吉野絵里香も違法アップロードなどのサイバー犯罪検挙に乗り出していました。

そんな中、吉野は「シンブンシ」を名乗る覆面の男が動画投稿サイトに妙な動画を投稿えいは削除が繰り返しているとの報せを受けます。動画では、新聞紙でつくった覆面を被った男が動画を通してインターネット上で炎上した案件を取り上げ、その中心人物に「明日、制裁を加える」という「予告」をしていました。

吉野はシンブンシを追いますが、敵も去るもの、動画の投稿がインターネットカフェから行われているということ以外には一切の手掛かりを残しません。

シンブンシはやがてインターネットユーザー=ネット民たちの支持を集めはじめます。インターネットの世論がシンブンシに味方するようになっていくのです。

愉快犯なのか思想犯なのか、それとも別の理由や目的があるのか。シンブンシの予告は続き、その内容も次第にエスカレートしていきます。吉野たちサイバー犯罪対策課はシンブンシを確保することができるのでしょうか。

3.『予告犯』の主要な登場人物

この項では『予告犯』という大きくうねるストーリーの中心にいる主要なキャラクタを紹介して参ります。

3-1 歪んだ社会の仕置人「予告犯」シンブンシ

タイトルロールである『予告犯』グループ、通称「シンブンシ」は実は複数犯。その面々を紹介します。

炎上案件の「渦中の人」に次々と「制裁」を加えていく彼らは、新聞紙を貼り合わせてつくった袋状の覆面を被る姿でインターネットの動画サイトに現れます。「明日の予告を教えてやる」の決まり文句で犯行の内容を予め説明し、指定した日(つまり「明日」)それを実行します。

犯行内容は、初期は物理的な力による制裁だったのが、時間を経るに従い、標的の社会的立場や制裁の理由も様変わりしていきますが、いずれにせよシンブンシが実行しない予告はありません。

警察の捜査パターンを読み、それをかいくぐりながら犯行を重ねる謎の犯罪集団はどのような面々で構成されているのでしょうか。

・サイバー警察の手をかいくぐるITの達人「ゲイツ」

 

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第2巻File014より引用

予告犯グループ「シンブンシ」の司令塔とも言うべき人物。コンピュータネットワークの技術に詳しく、知能に優れ、サイバー犯罪対策課の捜査の裏を掻いて翻弄します。ゲイツの計画は頭脳明晰な刑事・吉野をさえ右往左往させ、「狡知に長ける」と認めさせるほどです。

本名は奥田宏明と言い、もとは派遣のコンピュータプログラマ。「ゲイツ」という通称はおそらくこの経歴からの命名でしょう。ネットワークを介して遠方のPCを操作したり、会社のデータベースを社外から改竄するなど簡単にやってしまいます。

勤めていたソフトウェア会社で「3年勤めたら正社員採用」という約束を社長に反故にされ、パワーハラスメントの上、退職に追い込まれます。その後の就職も巧く行かず、日雇いの肉体労働をすることになります。

・最期につながるアレを所持する「カンサイ」

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第3巻File019より引用

長身・長髪で、大阪出身。関西弁を話します。もとはロック・ミュージシャンで、本名は葛西智彦。バンド活動は芳しくなく、敢えなく解散。その後、日雇い労働でしのぎます。

彼はバンドが解散する際に、熱心なファンの一人からペンダントをプレゼントされます。自殺願望を抱えていたという人から貰ったそれには銃弾型のペンダントトップがついていて、中には20人分の致死量の青酸カリが入っていました。

そのペンダントを長髪を後ろで束ねるのに使い、常に身につけています。このアイテムがのちに、シンブンシの行方を決定づけるキーとなります。

シンブンシのうち、おそらく最年長。シンブンシ最後の予告実行の是非を問い直した上で、リーダーの決定に忠実に実行、最も大切でつらい「カプセルのすり替え」を行うという重責を負いました。シンブンシの「最期」がこの行動で決定します。

・コミュ障だが純真な眼鏡の青年「ノビタ」

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第2巻File013より引用

眼鏡をかけた無口な青年。眼鏡をかけた容貌が国民的漫画の主人公を思わせたのでしょう。そこから通称「ノビタ」となったのだと思われます。

本名は木村浩一。東北出身で、父との死別を機に実家を逃げ出すようにして上京しますが、シンブンシとして活動をはじめてからしばらくは東北に滞在していました。

人と接することを苦手としており、特に女性が相手だとまともな言葉を発することが難しいほどです。しかし作中ではあるきっかけで1人の女性と知り合いになり、そのことによってシンブンシとして行動することに心の揺れが見られるようになります。

・ホークス愛と義理と人情に溢れる「メタボ」

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第3巻File017より引用

小太りでやや老け顔の青年。福岡出身で、他のメンバーと出会った頃は福岡ソフトバンクホークスの野球帽を被っていました。「溢れるホークス愛」と自ら口にするほどのホークスファンです。

本名は寺原慎一。いわゆるメタボ体型であることから通称がついたのでしょう。同じ理由で実際の年令よりも老けて見えるようです。実家の工務店を何れは継ぐはずでしたが、パチスロで身持ちを崩してしまい、日雇い労働をすることに。

日雇いの現場であるとき、厚い人情と熱い感情が大きく揺さぶられ、お国言葉で怒鳴る場面があるのですが、そのときの彼の行動が「シンブンシ」誕生のきっかけとなります。

3-2 インターネット世界の番人、警視庁サイバー犯罪対策課

インターネットを介した「サイバー犯罪」を追う警察の専門部署です。インターネットでの犯罪急増に際して警視庁に新設されたばかり。そこに若き女性刑事がいて陣頭指揮を執っているということで、マスコミが捜査現場に取材に来ている模様が第1巻File001に描かれています。

部署の構造に関しては詳細な描写はありませんが、サイバーに関するプロと捜査に関するプロがそれぞれに配属されている様子で、中には知識がサイバーではない捜査員もいるようです。それでもそうした人材は捜査という警察官としての資質を多分に持ち合わせていて、「警察の部署」としてのサイバー犯罪対策課を成り立たせています。

サイバーのプロと捜査のプロ。両者がともに長所を活かし短所を補い合う、新時代に現れるべくして現れた専門家集団です。

ここではその中のシンブンシ担当の警察官を紹介します。

・よくも悪くもスーパーウーマン/吉野絵里香

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第3巻File022より引用

いわゆる「キャリア組」の警察官で、26歳にして警部補という高い階級に就いています。ロングヘアですらりとした長身、「美人」と形容をする人もいます。

実力も実績もあり、新設されたサイバー犯罪対策課の班長を務めます。シンブンシ逮捕に情熱を燃やし、その手段として高額のコンピュータを何台も自腹購入するなど、突拍子もないことも平然と行う胆力を持っています。

性質は利発で活発、豪胆。警察内部でも外部の者にも歯に衣着せぬもの言いを分け隔てなくします。時折、人目を憚らぬ発言で部下を慌てさせることも。作中のある場面での発言には同伴の部下2人が思わずコーヒーを噴き出してしまっています。『予告犯』で唯一、ギャグ要素を請け負うキャラクタです。

・吉野の部下1:ITには疎いが刑事としての視点は鋭い/岡本大毅

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第3巻File015より引用

警視庁サイバー犯罪対策課の一員で、吉野の部下。口髭を蓄えたダンディなミドルエイジ。サイバー犯罪を担当している割りにインターネットには疎く、「『炎上』って何だ?」という質問や、ある炎上の内容について「意味が分からない」などの発言をしています。

岡本はインターネットの世界に明るくない読者とほぼ同じ視点を持つと考えられます。岡本の疑問とそれに対する回答のおかげで、インターネットに馴染みがない読者もストーリーに置いてきぼりを食うことなく、最後まで楽しめるようになっています。

・吉野の部下2:サイバー捜査の申し子/市川学

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第3巻File017より引用

警視庁サイバー犯罪対策課の若手刑事で、吉野の部下。ITに関するプロで知識と技術に優れます。ITに疎い岡本にインターネットについてやシンブンシの手口を説明することも多く、また、シンブンシの犯行現場や手口を予測するなどで、吉野を助けます。

ITに詳しい市川と疎い岡本が2人揃うことで、吉野の助けになりながら、読者の理解の助けにもなるという、作品にいなくてはならない存在です。

3-3 ストーリーの鍵であり発端「ヒョロ」

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第3巻File021より引用

日系フィリピン人の青年。貧しい中で母親を亡くしましたが、亡くなる間際に父親が日本人であると聞かされ、腎臓をひとつ売るという手段で費用を捻出して来日しました。

シンブンシの4人とは日雇い労働の現場で出会いました。過酷な環境で育ってきた彼ですが、彼自身は苦痛な様子も見せず、いつも人懐こく笑います。それ故に彼自身がかすがいとなってシンブンシらを結びつけることができたのです。

地獄の片隅のような労働現場で彼は亡くなってしまうのですが、彼の死が「シンブンシ」を生み出したのだと言っても差し支えないでしょう。

本名はネルソン・カトー・リカルテ(Nelsin-Kato-Ricarte)。この名はストーリーが展開していく中で重要なキーワードとなります。

4.『予告犯』思わず唸る事件3選

ミステリの要素もあり、クライム・サスペンスでもあり、ピカレスク・ロマンのようでもあり……このように読者をわくわくさせる要素が幾重にも重なる『予告犯』は、僅か3巻で完結しますが、とても読み応えがある作品です。

ここでは、シンブンシと警察との攻防や被害者が被害者となった理由などで深々と考えさせられたり、予想がつかない奇想天外だったりの事件を3つ、抜き出してご紹介します。

4-1 元気いっぱいの彼には元気玉を

R大学もと学生の関修二は同じ大学の学生が犯した婦女暴行事件について、SNSにこのような投稿をしました。

男にホイホイついていく女も悪い。自業自得じゃねえの?

「予告犯」第1巻File.002から引用

デリカシーも人権意識の欠片もない、容疑者擁護の投稿です。案の定、この発言は炎上し、関は身許を特定され、就職が内定していた企業にまで炎上は及んで内定取り消しの憂き目を見ています。

それがシンブンシの目について、予告と相なります。

元気があって大変よろしい。彼には特別な元気玉を注入してやろう。

「予告犯」第1巻File002から引用

シンブンシは関を某所に拉致監禁し、全裸で椅子に括りつけた姿をストリーミング配信しました。そればかりか、ネット民が見守る中、関が言うには「性的な玩具を後ろから…」。この「性的な玩具」がシンブンシが言う「元気玉」であった訳です。

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第1巻File002より引用

炎上のおかげで身許を特定され、内定取り消しを食らい、厭がらせの電話やストーカー行為も続いてつらい状態にあった関は、面談相手の吉野に「俺、そんなに悪いことしましたか?!」と当たります。吉野の答えはこうです。

自分でホイホイつい行ったんでしょ? 自業自得じゃねえの?

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第1巻File002より引用

関はシンブンシの被害者ですが、先に起きた婦女暴行事件の被害者から見ればセカンドレイプの犯人です。関のSNSへの投稿は決して許されるものではありませんし、だからこそ炎上したのでしょう。

この吉野の態度に痛快さを感じた読者は、きっと多いのではないでしょうか。警察官でもある吉野は吉野の正義を以て、犯罪を許しません。法が裁かなくても吉野はこのように容赦なく裁きます。

溜飲が下がる一場面ですが、ここでそのように感じるということは、読者も作中のネット民たちと同じ心境・立場にあるのだと言えましょう。

4-2 津波を嗤った環境保護団体にサイバー攻撃

シンブンシは標的を次第に大きくし、ついには世界的な環境保護団体に狙いを定めます。シーガーディアンという環境保護団体は過激な活動でつとに知られ、殊に日本に対しては反捕鯨で当たりを強くしています。

その上に、彼等は決してしてはいけないことをしました。

(海の神 [ ネプチューン ] の怒りの声を聞くがいい)
(ざまあみろ日本人め! イルカを殺した罰だ!)
(今日は素晴らしい日だ。これを機会に日本人が野蛮な行いを悔い改めることを願う)
(恐ろしい映像だ…しかしこれもイルカを殺したカルマが招いた災いに違いない)

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第2巻File008より引用

2011年に起きた東日本大震災での津波は捕鯨を続けていることに対する天罰だ、というコメントをインターネット上で行ったのです。日本人は当然、悪感情を抱き、シーガーディアンの制裁を予告したシンブンシは日本のインターネットユーザの過半を越える支持を得ます。

シンブンシはシーガーディアンに対し、サイバー攻撃を予告しました。吉野らサイバー犯罪対策課がこれを放置する訳にはいきません。来日中のシーガーディアン幹部らに直接接触、保護を提案します。

一旦は警察の保護を受け容れたものの、シーガーディアンのボスは途中でへそを曲げてしまい、秘密裏に録音していた吉野の言葉を編集し、自分たちへの悪態に仕立て上げようと悪巧みします。

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第2巻File009より引用

しかしシンブンシの企てにより、シーガーディアンが使用するノートPCを通して彼等の悪巧みはインターネットに配信されてしまうのです。シーガーディアン一行が宿泊するホテルの部屋には、彼等が訪れるより先に、既にシンブンシが細工をしてあったのでした。

横暴な外国の団体を出し抜き、手玉に取ったシンブンシ。素性も謎の犯罪者ながら、彼等はさらに日本のネット民たちの支持を集める存在となっていきます。

4-3 爆発物処理班がエナジードリンクを解体?!

ストーリーも終盤にさしかかる頃、、シンブンシはある政治家を標的にします。予告実行の舞台は、その政治家が出演するエナジードリンクの発売イベント。

無料でドリンクの試供品が配られるということで、野外イベントの会場には大勢の来場者があります。吉野をはじめ警察は警戒を厳に、入場者の所持品検査や試供品の点検を行います。

イベントがはじまり、来場者で会場が混雑する頃。試供品を入場者に手渡ししていたイベントガールが、試供品のある1本のキャップが力を込めて捻っても開けられないと訴えます。

試供品に何らかの細工が施されていると踏んだ警察は、爆発物処理班を使って件の試供品を開封に試みます。現場に張りつめる緊張感。毒物か、あるいは爆発物か。防護楯越しに遠隔操作でボトルのキャップを捻り、慎重に開封。すると……。

開封した瞬間、一気に宙高く噴き上がるドリンク! 何が起こったのかとざわめく警察関係者の中で、吉野は呆れた表情で呟きます。

メンタスゲイザー現象…。

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第3巻File017より引用

実在の商品名を作中では使用できないため、このように言っていますが、私たち読者が住む現実世界では「メントスガイザー」(mentosgeyser)と呼ばれる現象です。警察を出し抜いたこの奇想天外な仕掛けは、ストーリー終盤のこの頃にはシンブンシ支持派になっているだろう読者にとって爽快なものでしょう。

事件を傍観する大衆にとって痛快で爽快な、しかし一方で被害者と警察にとっては厄介な事件を繰り返す「予告犯」シンブンシ。一連の犯行は何を意味するのでしょうか。

次項からはストーリーをより詳しく検証し、その謎に迫っていきます。

5.【ネタバレ注意】「予告犯」の発端から結末までを9つに分けて徹底解説!

見どころが多い『予告犯』。ストーリーの展開は予測がつかず急ぎすぎず、しかし間延びしないという巧みな構成がなされています。

ここからは『予告犯』のストーリーを終盤まで追います。「ネタバレ拒否」の人はお気をつけください。

さて、『予告犯』のストーリーはおおまかには次のような流れで展開していきます。

  1. シンブンシの登場と警察の紹介
  2. シンブンシの過去
  3. ネット民を味方につけシンブンシの人気は最高潮
  4. シンブンシらしくない予告最後の配信

これをさらに9つに分けてご紹介していきます。

5-1 予告して、実行する

まず、ストーリーの冒頭では既に3つの事件が起こっており、間もなくもう1件発生します。計4件の事件がプロローグです。

  • 食品会社 → 会社に放火、全焼
  • 飲食店員 → 拉致監禁の上、揚げたゴキブリを食わせる。
  • 大学生 → 拉致監禁し全裸にした上、性的暴行
  • 会社員 → 拉致監禁の上、金属バットで暴行

これらすべてについてシンブンシという男が、

  1. 動画で予告して
  2. 翌日に実行する

と過程を踏襲しました。これが『予告犯』というタイトルの由来です。

 

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第1巻File001より引用

序盤は「ご挨拶」とも言えるジャブ的犯行が並びます。SNS等で炎上した案件から標的を定めて、「悪い奴」に罰を与えます。

ちなみに「シンブンシ」という呼称の由来は2つあります。

  • 予告動画投稿の際に使用するアカウント名が「shinbunshi_○○」
  • 動画に登場する男がいつも新聞紙でつくった覆面を被っている。

シンブンシ自らが「シンブンシ」と名乗っていた訳ではなく、これ等の理由から周囲がそう呼ぶようになったのです。

5-2 シンブンシは愉快犯ではない

シンブンシは過激な事件を起こしたいだけの無法者ではりません。犯行に当たり1つの哲学を持っています。

それは「制裁」です。

被害に遭った「シンブンシの標的」たちは、シンブンシに狙われるそれなりの理由がありました。

  • 会社に放火、全焼させられた会社社長 → 会社が食中毒事件を起こし、さらに社長は無責任な発言
  • 拉致監禁の上、揚げたゴキブリを食わせられたもと飲食店員 → 店のフライヤーでゴキブリを揚げる動画をSNSに投稿
  • 拉致監禁し全裸にした上、性的暴行を受けたもと大学生 → 性犯罪事件の被害者をSNSで揶揄(実質的なセカンドレイプ)。
  • 拉致監禁の上、金属バットで暴行された会社員 → 自社の面接に来た志望者をSNSにさらした

もちろん、この連続的犯行を警察が放っておく訳もありません。シンブンシとシンブンシを追いかける警察との追いつ追われつ、化かし化かされの白熱する攻防が、『予告犯』のストーリーの主軸となります。

5-3 シンブンシはインターネットカフェ「ピットボーイ」の関係者?

シンブンシが行うようなインターネットが関わる犯罪を取り扱うのが、警視庁サイバー犯罪対策課です。

そこに所属する若き警部補・吉野絵里香は、本作のもう1人の主人公です。ほかの捜査員が気づかない点にいち早く気づき、多少強引とも言える手段を平然と採ることができる吉野は、「狡知に長ける」と自ら評したシンブンシに手を焼きながらも、幾つかの手掛かりに行き着きます。

その手掛かりは次の3つです。

  • 「ピットボーイ」というインターネットカフェで予告動画が投稿されている。
  • 「ピットボーイ」で動画を投稿するには、パスワードが必要
  • 「ピットボーイ」では各店舗の店長と本部の社員しかパスワードを入手できない

この手掛かりによって、シンブンシは「ピットボーイ」の関係者ではないか?という可能性が持ち上がります。

5-4 シンブンシの過去

第1巻File006~File007では過去の話が展開されます。「シンブンシ誕生編」とでも言うべきエピソードです。

ここではシンブンシが次の4人であることが明かされます。

  • ゲイツ
  • カンサイ
  • メタボ
  • ノビタ

シンブンシとなる4人は日雇い労働で働かざるを得なかった面々です。それぞれ事情を抱え、たまたま同じ現場に居合わせた4人です。

巨大な岩をロープと梃子とコロ(丸太)のみで動かすなど、到底人力でするものではない作業が続く過酷な現場です。

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第1巻File006より引用

そこにはヒョロという、もう1人の仲間がいました。行方不明の日本人の父を探して来日した日系フィリピン人です。性質は、素朴で無邪気。全員が互いに打ち解け、強く結びつくことができたのは、ヒョロがいたおかげです。

しかし、ヒョロはある日作業中に倒れ、亡くなってしまいます。

日本に来る費用を工面するために腎臓を片方売ってしまった彼は、腎不全を起こしてしまったのでした。

ヒョロの遺体を見た現場監督は「よくあることだ」と悪怯れることもなく、シャベルを投げて寄越します。シャベルはヒョロの遺体の上に乱暴に落下。吐き捨てられた言葉は「早めに埋めとけ、腐るからな」

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第1巻File006より引用

これに我慢も堪忍もしかねた4人は投げ出されたシャベルを手に取り、現場監督に叩きつけました

その後、彼等は自分たちが使用していた建物に火を点けました。殺人、放火、死体遺棄。後戻りできないところに来てしまいました。

行き場をなくした彼らが下した決断がこうです。

このまま街に戻れば確実に終身刑だ。その前に何か、俺達の力でやり返してみたくないか。

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第1巻File007より引用

ヒョロの死が、シンブンシを生み出したのでした。

この回想シーンで、「これ、後でみんなにやるわ」とカンサイが、かつてバンド活動していたときのファンに貰った、青酸カリが入っているという小さな容器を見せます。これがシンブンシにとって重要な道具となります。

5-5 ネット民を味方につける

回想が終わり、ここからは再び現在です。

4件の犯行の後、シンブンシは動画投稿サイトの生放送枠を取り、放送をはじめます。今度は「予告」ではなく、シンブンシは画面の向こうにいるであろうネット民に語りかけます

俺がこの世で最も憎んでいるものは、お前たちの中から自尊心を奪い取ろうとする何かだ。
もしも今後、理由もなくお前たちを侮辱する人間が現れたら俺に言え。
俺が殺す。必ず殺す。

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第1巻File004より引用

生放送の途中でシンブンシのアカウントは強制停止。これを機にネット民の警察への攻撃ははげしさを増し、シンブンシへの評価は支持が不支持を上まわるようになります。

5-6 シーガーディアン事件

シンブンシは次の犯行でさらにネット民の支持を得ることになります。続いて行うのは、活発に反捕鯨活動をしている国際的な環境保護団体「シーガーディアン」への制裁です。

この組織の者たちはかつて3.11の津波の映像を見て、被災地やそこに住む人たちを傷つける発言をしたことが既に知られています。

こんなクズ野郎共には制裁だ。
明日の午後10時、こいつらにサイバー攻撃を仕掛けてやる。

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第1巻File008より引用

吉野らサイバー犯罪対策課は直ちに来日中のシーガーディアン幹部たちに、シンブンシ確保のための捜査協力を求めます。渋々ながら承諾したものの、些細なことでシーガーディアンのボスがへそを曲げてしまいます。

そこで彼らは警察と話したときに録音してあった吉野の音声データを編集してシーガーディアンへの暴言に仕立て、日本警察の悪評を煽ろうとしました。

しかし、シンブンシはそれに先駆けてシーガーディアンが滞在しているホテルに潜入して彼らのPCやスマートフォン用のケーブルに細工を済ませています。

PCのカメラを通じて彼らが音声編集を相談している様子を録画し、インターネット上に配信します。

シーガーディアンの悪事が暴露されたことを日本のネット民は嗤い、シンブンシを支持する声はさらに高まっていきます。

5-7 模倣犯の出現と設楽木の登場

さらに新たなシンブンシの「予告」が投稿されました。今度は「殺人予告」です。

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第2巻File013より引用

「人殺しまーす」という軽佻浮薄な予告の主は、新聞紙の覆面を被ってはいますが、明らかにシンブンシではありません。とうとう模倣犯が現れたのです。

予告現場には多数の警察官が配備され、事件は現行犯による被疑者確保であっけなく解決します。

「くっだらねー」という野次馬の声を聞いて、現場にいた吉野も呆れます。

馬鹿が馬鹿を煽って馬鹿を産む。馬鹿サイクルかよ。

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第2巻File012より引用

しかし、この馬鹿が政治家を動かしてしまうのです。

模倣犯の出現を受けて、放送メディアは「インターネットは危険なメディアである」というイメージをつくる番組を放送します。番組に出演した衆議院議員の設楽木は、インターネット上の匿名性をなくす法案をつくると発言しました。

そして視聴者の反応は

  • スタジオの観覧者は設楽木に拍手喝采
  • SNS経由の番組へのコメントは設楽木を支持

何やら不自然なまでの絶賛振りですが、これらはすべて「仕込み」でした。

SNSのコメントは、設楽木の後援会事務所で1人に10個のアカウントが割り当てられた大勢のアルバイトが投稿していたのです。

5-8 エナジードリンク事件

設楽木礼賛番組の放送後、シンブンシが新たな予告をしました。今度はほんもののシンブンシです。

衆議院議員設楽木匡志、こいつを72時間以内に殺害する。

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第2巻File014より引用

「ネットの健全化と称して馬鹿げた法案を立ち上げてネットの自由を奪おうとしている」という理由による制裁です。狙いどころは、設楽木が出演するエナジードリンクの発売記念イベントです。

イベントではサンプルが配られました。サンプルの配布は係員がキャップを開けて来場者に手渡すというかたちで行われていましたが、早々に「開かないサンプル」が出現します。

仔細に見ればキャップに細工の痕跡があります。警察はここで大きな判断を下しました。イベント中止、爆発物処理班投入。

物々しい装備の爆発物処理班が遠隔操作でキャップを開けると、ドリンクが天高く噴き上がりました。キャップの内側に清涼菓子が封入されていて、開栓すると飲料の中に落ちて泡が噴き上がるよう細工されていたのです。

事件後。

設楽木の許に党幹事長・政調会長両名が揃って現れ、「Trojan.Upchan」の文字を見せます。

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第3巻File018より引用

Trojan.Upchanは感染するとPCのデスクトップを定期的に撮影し、匿名掲示板に勝手に投稿するというコンピュータウィルスです。これが設楽木の後援会のPCすべてに入り込んでいたというのです。

テレビ番組に取り上げられていた設楽木支持のコメントがすべて「仕込み」だったことの証拠が、インターネット上にばらまかれたということです。

幹事長・政調会長は設楽木の党員資格剥奪と議員辞職勧告決議案提出を告げます。設楽木の議員生命は絶たれてしまったのです。強かな設楽木もあまりのショックにこの場で倒れ、病院に搬送されてしまいました。

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第3巻File018より引用

5-9 シンブンシ最後の配信

設楽木の事件収束後、また新しい予告動画が投稿されました。シンブンシは言います。

「この動画が最後の投稿になるだろう」。

「シンブンシという4人組は制裁と称してリンチを行い、神様気分になっているクズ野郎」だとして、2つの予告をします。

  • シンブンシを24時間以内に処刑する。
  • その様子をインターネットで生中継する。

シンブンシの最後の標的は、シンブンシでした。

シンブンシは予告動画を投稿した漫画喫茶に、USBメモリを残していました。

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第3巻File018より引用

警察はもちろん、USBメモリを押収してデータを解析します。同時に、吉野は馴染みのハッカーを呼び出し、シンブンシがインターネットカフェを利用するたびに書き残す「ネルソン・カトー・リカルテ」という名についての情報を、公安警察から盗み出します。それによって次のことが分かりました。

  • ある閉店した「ピットボーイ」ではOTPトークン(パスワードを発行するツール)が1台、未回収になっている。
  • 「ピットボーイ」の従業員データは5年保管のはずが、閉店した店舗のデータから1人分、削除されている。
  • 削除されたデータを復帰させてみると、「ネルソン・カトー・リカルテ」という日系フィリピン人の従業員のものだった。

 

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第3巻File020より引用

パズルのピースが揃いました。これを巧く組み合わせないと事件の全体像は掴めません。もう一歩踏み込んだ捜査が必要です。

その頃、シンブンシ4人はとある廃屋で最後の予告を実行しようとしていました。ゲイツが促し、カンサイは長髪を束ねていたペンダントを外します。バンド時代のファンから貰った青酸カリを取り出します。「処刑」がはじまるのです。

サイバー犯罪対策課がUSBメモリのデータを解析を進めている一方で、シンブンシたちの生中継がはじまります。彼ら自身が言う「最後の配信」、それは自殺配信でした。

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第3巻File020より引用

ネット民を味方につけて設楽木のようなクズ議員を殺害することを目的に行動してきたが、それは失敗した。その責任を取る。その名目での「シンブンシの処刑」=自殺です。

4人は新聞紙の覆面を取り、素顔を見せた上で、青酸カリのカプセルを飲みました。カプセルが溶ける30分後には4人とも死亡するでしょう。

しかし、中継を見ていた吉野は気づきます。カンサイからほかの3人にカプセルが渡されるとき、すり替えが行われたようなのです。

やがてUSBメモリの解析が終わり、GPSデータを含む画像データを取り出すことができました。GPSデータからシンブンシの居場所を特定した吉野らは、現場に急行します。

「予告犯」(筒井哲也 / 集英社)第3巻File020より引用

吉野は、シンブンシの「最後の予告」実行を阻止することができるでしょうか。シンブンシと吉野の邂逅は何をもたらすでしょうか。そしてシンブンシの目的は一体?

ここから先は、どうかご自身でご確認ください。

6.まとめ

漫画『予告犯』は普通に読めば、「理智に富んだ犯罪者と奇抜な性格と秀れた才知を持つ刑事が繰り広げる頭脳戦」といった物語です。

この物語のうち、本稿では下記の5点をおおまかにまとめました。

  • 基本情報:『予告犯』と作者・筒井哲也について。
  • あらすじ:ざっくりとストーリーラインを知りたい人はここを見て。
  • 見どころ:読む時間ないよ!という人はここだけでも見て
  • キャラクタ紹介:主なキャラクタを把握してストーリーに臨んでください。
  • ストーリー紹介:あらすじよりも詳しく、終盤までの流れを紹介。

『予告犯』のだいたいが把握できて、実際に読むときのガイドにして頂けるものと思います。本稿を通して『予告犯』の魅力を感じ、実読につなげて頂ければさいわいです。

 

ライター:衛澤 創

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衛澤 創

一年中アロハのおじさんライター。読み書きと甘いものとねこと短髪髭眼鏡が好き。物語を伴ったものなら小説・漫画・映画・舞台劇・落語などなど、何でも好きです。救われない、読後感がよろしくないお話が好きという悪趣味な面も。