百合漫画『ちかのこ』の読むと幸せになれる異種族同居コメディの魅力とは?登場キャラと日常と非日常を巡る不思議なお話をご紹介

百合漫画『ちかのこ』の読むと幸せになれる異種族同居コメディの魅力とは?登場キャラと日常と非日常を巡る不思議なお話をご紹介

どうも。マンガタリライターの相羽です。

長年「百合」作品を読んでおりまして。

仕事に人間関係にと何かとお疲れ気味な現代社会。女の子同士が楽しく仲良くしている百合漫画の世界に触れる時間が、癒しになっていたりもします。

百合漫画を楽しむこと十年くらい、これまで百冊以上読んできたのですが、実はその中でも、

  • 他の作品とは存在してる異相が違って
  • 圧倒的なユニークさを宿している

もうめちゃめちゃ大好き! という作品が一つあります。

その名は、『ちかのこ』。

控えめに言うならオリジナリティがある、強い言葉を使うなら狂気が宿っている、そして「幸せ」が伝わってくる温かい漫画です。

今回の記事で紹介させて頂くのをきっかけに、多くの人に『ちかのこ』を知ってもらえたなら幸いです。

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目次

1、『ちかのこ』ってどんな漫画?

ちかのこ 1 (E★2コミックス)
著者 らぐほのえりか
出版社 廣済堂出版
掲載雑誌 pixivコミック(MANGA pixiv)/『E☆2(えつ)』
巻数

既刊4巻(2019年5月時点)

らぐほのえりか先生が描く、超展開百合ハーレムコメディ漫画です。

「pixivコミック(MANGA pixiv)」で話の区切りごとのまとめを連載しつつ、ほぼ毎日(土日以外)1PずつTwitterで更新されていた漫画で、日本の疲れた(え)社会人の皆さんの日々の癒しになっていたりした作品です。

現在(2019年時点)はTwitterでの(ほぼ)毎日更新から、雑誌『E☆2(えつ)』でまとまったエピソードが掲載されるように移行していたり、「pixiv chatstory」でチャットストーリーが発表されたり、紙でのコミックスの刊行も続いていたり、とじわじわと広がりをみせている作品です。

(WEB、コミックス、即売会イベント、などなどと発表の場が様々である作品なので、今後の展開に関しては、らぐほのえりか先生のホームページを随時チェックして頂けたらと。)

それまで友達がいなかった、ちょっと陰キャな女の子である主人公の千条ノコ(ちじょう・のこ)が、東京都と埼玉県の間にありそうななさそうな謎の街「狭間町(はざまちょう)」で一人暮らしを始めるところから物語は始まります。

一人での平穏な暮らしを望んでいたノコでしたが、突如部屋の地下から地底人のチカが現れて不思議な交流が始まっていきます。

天上人、悪魔、などなど、徐々に一緒にいることになる種族の違う女の子が増えていって、かつ皆ノコのことが大好きになっていきます。

エネルギーもスペックもお金もそんなにないけれど、ちょっと不思議でとてもフツウな女の子たちが、何となく「幸せ」を目指して友達と一緒にかけがえのない日々を過ごしていく物語が綴られていきます。

2、『ちかのこ』では種族が違う6人(+1人)の女の子が幸せに一緒に暮らしている

「狭間町」にある通称「ノコハウス」での、種族を異にする女の子たちの雑居暮らしの様子を描いている作品なのですが。

一緒に暮らしている面々は、みんなノコのことが大好きというのが共通していますが、一人一人のキャラクターに個性があり、固有の魅力があります。

まずは、ユニークな登場キャラクターたちを見ていってみましょう。

2-1 「千条ノコ」幸せに焦がれるちょっと陰キャな女子高生で百合ハーレム女王になる(?)主人公

(『ちかのこ』2巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

千条ノコ(ちじょう・のこ)。

本編の主人公です。

彼女が謎の街「狭間町」に引っ越してくるところからお話は始まります。

物語冒頭では、ノコはわりとツンツンしています。

のちにとても大事な存在になるチカに対しても、最初は邪険に扱っています。

(『ちかのこ』1巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

強い言葉を使ったりもする一方でどこかで寂しさを抱えている女の子で、心の奥では友達と過ごす楽しい時間に憧れのようなものを持っています。

(『ちかのこ』1巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

何の縁か地底人のチカという友達ができたのをきっかけに、彼女の中でも何かが少しずつ変わっていきます。

(『ちかのこ』1巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

天上人のポイ、地上人(?)のマキナと少しずつ友達も増え、孤独でイイと捉えていた部分(あるいは、少しスネていた部分もあったのかもしれません)が和らぎ、友達と過ごす時間がまんざらでもない感じになっていきます。

(『ちかのこ』2巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

まんざらでもないというか、出会う女の子女の子がみんなノコのことが好きになっていき、やがて「ノコハウス」は百合ハーレムみたいな状態になったりも。

(『ちかのこ』4巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

『ちかのこ』は、ノコが友達と一緒に何となく幸せを目指したりする物語なのです。

2-2 「内野チカ」ゴボウに話しかけたりしつつもノコに惹かれるうちに可愛くなり過ぎてゆく地底人

(『ちかのこ』3巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

内野チカ(うちの・ちか)。

地底人です。

チカは最初ゴボウに話しかけていたり、ジャージを着ていたりとあかぬけてない感じです。

(『ちかのこ』1巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

自分の可愛さに気を使ってない感じです。

ですがノコと出会って、恋する乙女は可愛くなってゆく的な現象なのか、チカはどんどん可愛くなっていきます。

外見にも気を使って、美容院に行ってみたり。

(『ちかのこ』1巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

これは……可愛く……なってる? の……か?

こんな(髪が)大変なことになってしまったチカがどうなるのかは、漫画本編をお読み頂けたらと思います。

こういった「笑い」をクッションに挟みつつ、後半になってくるとチカはガチで可愛くなってきます。

(『ちかのこ』3巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

地上人が好きになってしまった地底人の恋する乙女道を、見守って頂けたらと思います。

2-3 「天使ポイ」大きな愛とおっぱいでノコにフォーリンラブ中のお金持ちで金髪の天上人

(『ちかのこ』4巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

天使ポイ(あまつか・ぽい)。

天上人です。

まず、彼女はお金持ちであるという特徴があります。

当初は、本人もけっこう自分がお金持ちであることを鼻にかけてます。

(『ちかのこ』1巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

パパに頼んでおもむろに国家規模の「マイナンバー宝くじ」を開催したりします。剛腕です。お金、怖いです。

(『ちかのこ』1巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

そんなポイですが、いつしかノコに惹かれていきます。

ノコを好きになってしまったきっかけと思われるのはこの場面。

(『ちかのこ』1巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

お金の力で贅沢に慣れていたんだけど、尽す愛に目覚めたみたいな感じなのでしょうか。

振れ幅が極端なのか、ちょっと変態チックにノコにフォーリンラブしていきます。

(『ちかのこ』2巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

彼女の過剰な愛が報われるのかは分かりませんが、恋する天上人のハートフルな気持ちが、読んでて伝わってくるキャラクターなのです。

2-4 「都合マキナ」普通のツインテ女子高生と思いきや、世界改変?ド級の秘密がある地上人(?)

(『ちかのこ』3巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

都合マキナ(つごう・まきな)。

地上人(?)です。

ノコに初めてできた地上人の友達といった体で登場してくるマキナなのですが。

(『ちかのこ』1巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

可愛いです。常識人のような気がします。

しかし、マキナには実は大きな秘密があります。

(『ちかのこ』3巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

Twitterで公開された時に読者がざわついたページですね(笑)。

コミックスのキャラクター紹介ページとかで普通に正体が書いてあったり、神話・演劇などに詳しい人は「マキナ」という名前から「そういうことか」と推測できたりするかもしれませんが。

マキナは何者なんだろう? と想像を膨らませながら読むのも楽しい読み方の一つかと思います。

(『ちかのこ』2巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

マキナ……本当に何者なんだろう……。

2-5 「亡藤メア」契約を重んずる真面目な性格だけどうっかりノコとの恋に道を踏み外した悪魔

(『ちかのこ』4巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

亡藤メア(ないとう・めあ)。

お金と寿命を交換したりする契約を請け負う悪魔として、わりと初期のエピソードから登場していたメア。

(『ちかのこ』2巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

初登場の時はそこまでノコが大好きという感じでもなかったのですが。

ある日、教室で二人きりになり。

(『ちかのこ』4巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

ここで顔を赤らめるイベントが発生します。

(『ちかのこ』4巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

悪魔のわりに積極的にアプローチされると弱いタイプだったのでしょうか。

「ノコハウス」のみんなと過ごした謎の「お花見」を経て。

(『ちかのこ』4巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

一緒に暮らさないかというみんなからの誘いにかなり迷いを見せるのですが。

契約とか常識とか、あらゆる表層をフっとばして、好きな人と「一緒にいたい」という気持ちが上回ります。

(『ちかのこ』4巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

契約にも真面目でしたが、一番は自分の恋にも真面目で。そのひたむきさをを応援したくなるキャラクターなのでした。

2-6 「クロ」子供の頃に拾ってくれたノコにもう一度逢いたくて人間になったワンダーな黒猫

(「ちかのこ」『E☆2(えつ)』vol.62掲載分 らぐほのえりか/E☆2編集部 より引用)

クロ。

何を隠そう、元はネコです。

(『ちかのこ』3巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

捨て猫だったのをノコに拾われて、少しの間一緒に過ごした幼少時代。

当時は離れ離れになってしまったのですが。

人間になって再びノコのもとにやってきます。

(「ちかのこ」『E☆2(えつ)』vol.62掲載分 らぐほのえりか/E☆2編集部 より引用)

「ずっと一緒にいたかった」という子供の頃に願った絵空事を現実にしようと、人間になってまでノコのところにやってきたのだと解釈すると、けっこうじ~んとする話です。

離れ離れになってしまった子供の頃のバッドエンドを「やり直し」しているとも捉えられるかもしれません。

別の言い方をすれば、幼少時は、ノコとノコの姉の杏音(あんね)だけではクロに居場所を作ってやることができなかったとも言えそうです。

しかし今度は、ノコだけでなくみんながいます。ノコもちょっとだけ大人になってます。

「ノコハウス」の様々で不思議な面々に戸惑ったりしますが。

(「ちかのこ」『E☆2(えつ)』vol.62掲載分 らぐほのえりか/E☆2編集部 より引用)

「ノコハウス」は黒猫が人間になって「い」てもナチュラルにオッケーな場所です。地底人とか悪魔とかいるくらいですから。

(「ちかのこ」『E☆2(えつ)』vol.62掲載分 らぐほのえりか/E☆2編集部 より引用)

ネコが人間になってやってきても、特に気にしないような居場所。

不思議な「狭間町」の「ノコハウス」で、クロのノコとの「もう一度」の暮らしがはじまっていくのです。

2-7 「千条杏音」妹のノコを溺愛する女子高生でモデルやってるハイスペックで陽キャなお姉ちゃん

(『ちかのこ』3巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

千条杏音(ちじょう・あんね)。

ノコのお姉ちゃん。ノコと顔が似ています。

お姉ちゃんは一緒に暮らしてるわけではないのですが、時々「ノコハウス」にやってきます。

陰キャなノコとは正反対で、陽キャでモデルをやってたりします。

あまりの陽のオーラに、ノコはBang!!したりします。

(『ちかのこ』3巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

杏音は作中でも、めっちゃ強キャラです。

ポイなどはあっさりと陥落し。

(『ちかのこ』3巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

かなりの強キャラであるマキナですら押され気味です。

(『ちかのこ』3巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

ところで、杏音はノコにとって、「家族」というずっと「一緒に」いた存在です。

(『ちかのこ』3巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

「家族」にしろ「部活」にしろ、「ずっと一緒にはいられない」はいわゆる「日常」もの作品の根幹に横たわっている課題ですが。(「自立」にしろ「卒業」にしろ、「日常」の共同体はいつかは壊れていってしまう性質を含んでいるから)

この世界に存在する「いつか離れていく力学」に対して、一度別々に暮らすようになっても、こうしてフラっとノコに逢いにきてくれてパワフルに振る舞ってくれるお姉ちゃんは、頼もしかったりするのです。

(『ちかのこ』3巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

(何らかの意味で)大好きな人とずっと一緒にいられるような不思議なパワーも世界にはあるんじゃないだろうかと、杏音を見てるとそんな前向きな気分になってくるのです。

3、『ちかのこ』を読みながら不思議な日常と非日常を巡る中で、自分の「幸せ」の在りかに気づく

6人(+1人の)登場キャラクターを見てきましたが、各キャラクターそれぞれの物語としても、作品全体のストーリーとしても、『ちかのこ』という作品のキーワードとして浮かび上がってくるものに「幸せ」という言葉があります。

物語としても「幸せ」について描いてる作品なのですが、面白いのは読んでるうちに現実の凝り固まりがちな思考が『ちかのこ』の不思議な世界の影響を受けて、「幸せ」がじわじわと読み手にも伝わってきたりもする点です。

本節では、『ちかのこ』を読みながら「日常」と「非日常」を行ったり来たりしてる間に、あ、何気ないけどこういうのって「幸せ」だったんだよな……と伝わってくる部分を簡単なエピソードの紹介と共に見ていってみましょう。

3-1 【日常編】食玩のおまけの宝石に愛を見つける~何気ないものに「幸せ」は宿ってるのに気づく

出会って間もない頃、ノコとチカが買い物にいって、チカが集めてる食玩を買おうとするエピソードがあります。

チカが買ったのは「宝石入りのお菓子」。

この時のチカの食玩に関する見解がこちら。

(『ちかのこ』1巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

いわく、「貯まったら宝箱に入れて土の中に埋めておくんだよ!」と。

食玩のおまけの宝石。大人になってしまうと、「たかが食玩のおまけ」という風に思ってしまいがちなのですが。

実際、ノコも当初は「そんな無意味なことのために」と突っ込みを入れたりしています。

時が経ち、ノコとチカの関係性が少しずつ深まってきた頃に、チカが再び「あの時」の食玩のおまけを入れていた宝箱から「石」を取り出してきてノコにプレゼントするというシーンが描かれます。

みんなでバイトをするエピソードでチカが貰った「初めてのお給料」でお父さんとお母さんにプレゼントを買ったと語るという流れから(「家族」が意識されるということ)の、ノコへの感謝のプレゼントです。

本当に、何気ないプレゼントなのですが。

(『ちかのこ』1巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

今度は、ノコはただの石に「幸せ」を見つけるのです。

(『ちかのこ』1巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

それはもう、ただの石ではなく、チカと過ごした大事な時間やチカの気持ちが見つけられるものになっているから。

とりわけゴージャスなものじゃなくても、今、ここにある何気ないものに「幸せ」は宿っているのかもしれないというのが伝わってくる場面です。

ノコは、起業とかしてバリバリ大成功するとか、石油王に見初められて贅沢生活したりとか、そういった方向での「幸せ」を手にすることはないのかもしれません。

「貯まったら宝箱に入れて土の中に埋めておくんだよ!」というチカの話は、真顔になって考えてしまうなら妄想の類といった事柄かもしれません。実際に魔法がかかってただの石や食玩の宝石が現実として物質的に変化するわけじゃない。そういう意味では絵空事です。

でも、その絵空事が大事なものだ。「幸せ」をくれるものだ。というのがこのシーンのノコには感得されています。

「現実を見ろ」って言われることが多い社会では切り捨てられてしまいがちな絵空事を、大事だ。と思った。

このエピソードでは「石」ですが、リアルの方の私たちに想いを馳せてみるなら、人によってはそれは何気ない郷里の「街角」、子供の頃に一緒に過ごした「ぬいぐるみ」、プレゼントにもらった「色鉛筆」、そして日常を一緒に過ごしている大事な「人」かもしれません。

『ちかのこ』を読んでいると、たまに周囲にある何気ない「もの」「こと」「ひと」に「幸せ」は宿っていたりするのかもしれないと思えてきたりするのでした。

3-2 【非日常編】聖夜に願ったのは「無償の愛」~超展開から始まる夜に静かな「幸せ」に気づく

「日常」の何気ない場面に「幸せ」を見つけることもあれば、ちょっとした「非日常」に「幸せ」のテンションが上がるということもあると思います。

いつもと違うちょっと特別な日。ハレの日。

『ちかのこ』で個人的に好きなのは第15話「クリスマス!イッブ!!」――「日常」もの作品では定番ともいえるクリスマスエピソード――の冒頭です。↓

わりとファンの間では伝説になっているページですね(笑)。僕もTwitterでの公開当時、PCの前で「ええっ!?(どういうこと!?)」って声がでましたね……。

こんなクレイジーな感じではじまるクリスマスエピソードなのに、なんということでしょう、「幸せ」について伝わってくる部分で一番好きなのもこのクリスマスエピソードなのです。

クリスマスイブの夜に、サンタに扮した天使のポイが眠っているノコの枕もとを訪れます。

クリスマスの「欲しいものを書いた紙」にノコが書いていたのは、「無償の愛」

(『ちかのこ』2巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

昼間はめちゃめちゃ騒いでいた人間が、夜、心の奥で穏やかで温かなものを求めていたりする。

作品全体のトーンである愉快さやコメディな雰囲気の中に、自然に「愛」とは? 「幸せ」とは? といった静けさが貫入してくる、とても好きなシーンです。

紙を見たポイは、眠っているノコの額にやさしくキスをします……。

ノコの目元に、ちょっと「泣いたあと」を見つけて。

(『ちかのこ』2巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

なんて優しい話だと読者が涙した次の日。

クリスマス当日の冒頭はこんな感じです。

(『ちかのこ』2巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

まさかの「てんどん」。

 

てんどん:ざっくりとは「繰り返し」で笑いを取りに行く技法

 

さっきまで「幸せ」って何だろうと深淵な気分になってた僕(読者)の気持ちを返してくれと思ったりもしつつ。

(『ちかのこ』2巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

サンタ役になっていたポイの方に、(プレゼントに象徴される)「幸せ」が返ってきたりと、優しくエピソードが閉じていたりもします。

破天荒にボケ倒すギャグと、静かな幸福論が同居してるのが『ちかのこ』という作品の魅力です。

3-3 【超・非日常編】未来の愛するあなたと邂逅~SF的超展開の逆説で目の前の「幸せ」に気づく

最後に『ちかのこ』ならではという、超・超展開から「幸せ」に落ちる不思議な話について語ってみます。

『ちかのこ』のわりと序盤の第11話「夏休み」。

おもむろにポイの子孫が700年後にタイムマシンを開発するという話が出てきます。

(『ちかのこ』2巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

こ、この作品SFもありなの!? と読者たちが戸惑う中、伏線を回収しながら淡々と「大長編ドラえもん」もびっくりの壮大なスケールの物語が展開されるのが第13話「あなたの寿命、買い取ります」です。

メアとの契約で寿命をめっちゃ伸ばしてもらったチカ。(謎多き存在であるマキナの寿命を一年分貰ったら、ものすごく寿命が延びてしまったのです)

(『ちかのこ』2巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

一見、寿命が長くなるのは良いことのようにも思えるのですが……。

ベルを鳴らす音が聴こえ、「ノコハウス」に来訪者がやってきます。

やってきたのは、700年後からやってきたチカでした。

(『ちかのこ』2巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

長い時間を一人で生きてきたらしい、未来から来たチカは語ります。

「もうひとりぼっちは嫌なんだ」

「だから思い切って会いにいこうって思ったんだ」

「その寿命の契約を取り消してもらえないかなぁ」

……と。

一人で700年生きるきっかけとなった契約を未来のチカが取り消すというこの展開が。

定命で限られていたとしても、大好きな人たちと一緒にいる何気ない今の「日常」に「幸せ」は既にあるのかもしれないということを伝えてくる仕組みになっています。

700年一人で生きてきたチカの視点から映るノコはとてもキラキラしていて、愛しくて。

(『ちかのこ』2巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

たいへんに輝いている感じになっていて、「3-1」で語った何気ない普通の石に「幸せ」が宿っていることに気がつくのと同じ法則で、チカにとって(この時間軸では)いつも一緒にいるノコが、いかにかけがえのない存在なのか、「幸せ」をくれる人なのかをあぶりだしています。

(『ちかのこ』2巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

リアルの方に目を向けるなら、人によって、それは家族であったり恋人であったり友達であったり様々であると思います。

壮大なSF的設定と展開の末に、何気ない場所、もの、こと、ひとに戻ってくる『ちかのこ』のこのエピソードを読むと、

大好きな人と一緒にいられる、ただそれだけの場所に、時間に、「日常」に、既に「幸せ」はあったりするのかもしれない……なんてことが静かに伝わってきたりするのでありました。

4、まとめ

今回の記事では、

超展開百合ハーレムコメディ漫画『ちかのこ』に関して、

 

  • 7人の主要登場キャラクターたちの魅力を紹介させて頂いた上で、

 

本作にはキーワードとして「幸せ」という言葉があることに注目し、読みながら、

 

  • 普通の「日常」で身近にある「もの」、「こと」、「ひと」などに「幸せ」を見つけてじんわりと感じてみるのもヨシ
  • 昼の祭事・イベントのような「非日常」にテンションが上がってみる中で、夜に「無償の愛」のような静かで穏やかな「幸せ」を感じてみるのもヨシ
  • SF的「超・非日常」世界へ向けて意識を広げていった後の逆説で、今、ここで大事な人と一緒にいられるただそれだけのことに「幸せ」を感じてみるのもヨシ

 

な感じで『ちかのこ』という作品の魅力を紹介させて頂きました。

お疲れになりがちな現代社会ではありますが。

『ちかのこ』を読んで女の子たちの百合百合しく楽しい日常を追ってみたり、

想像を超える超展開に触れて、現実で凝り固まっていた思考がイイ感じにほぐれたりしていくうちに、あなたもささやかに「幸せ」を感じたりするようになるかもしれません。

『ちかのこ』は現在(2019年5月時点)、

コミックス第4巻収録部分くらいまでは「pixivコミック(MANGA pixiv)」で無料で読むことができます。(コミックス用の描き下ろし漫画やおまけページなどはコミックス版のみの収録となっております)↓

 

●ちかのこ – pixivコミック(pixivへの登録が必要)

 

今回の記事がきっかけで、この楽しくてユニークな漫画に触れて頂けたら、一『ちかのこ』ファンとしても、たいへん喜ぶのでありました。

 相羽裕司(あいばゆうじ)

 

「日常」もので「百合」な作品は良いものですが。

今回紹介させて頂いた『ちかのこ』を描いておられるらぐほのえりか先生の作品で、もう一作品おすすめの作品があります。

女の子たちが「学校をリゾート化する」謎の部活で百合百合しい日常を過ごしていく漫画、『すくりぞ!』です。

 

  • ホっとできるような居場所(リゾート)が広がって「日常」が楽しくなっていく
  • お母さんも入部しちゃう!? な感じのとても自由なお話が紡がれる
  • 読んでるとなんだか心に余裕ができてくる

 

な、学校リゾート化コメディ漫画『すくりぞ!』の紹介記事も同ライターが書いていたりしますので、合わせてお読み頂けたら喜びます。↓

『すくりぞ!』の読むとホっとする学校リゾート化コメディの魅力とは?6人の登場キャラと心に余裕ができるゆるやかな話をご紹介

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2019年7月1日

そして。

日本発、漫画の世界にも広がる「百合」ワールド。

今回紹介した『ちかのこ』のような振り切り過ぎてるほどユニークな作品もワンダフルですが、気になる先輩、歴史が感じられる寄宿舎、揺れるタイとプリーツスカート……といった、良い意味で様式的な「百合」作品もまた良いものです。

「百合」漫画に関して同ライターがこちらの記事も執筆しておりますので、合わせてお読み頂けたら幸いなのでした。↓

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宮城県仙台市在住のブロガー。言語の研究をしている人。最近は震災からの地域復興も兼ねて、マンガを含む二次元キャラクターのAR(拡張現実)を「ガワ」にした介護補助AI(人工知能)を開発しようと(勝手に)考えている。自身も親の介護生活中。人生に影響を受けた漫画はCLAMPの『ツバサ』。